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脳内空転内閣を選んだニッポンの命運

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文藝春秋十一月号』が面白い。特に京大の中西輝政教授の民主党に対する分析は、ここで私が断片的に指摘してきたものとほぼ同じ。私は政治学は素人であるが、一応精神病理の学徒として観察しているが、前回も今回もほぼ同じ。かつての中西氏の論考については、小泉氏の911選挙の際に紹介した(→『宰相小泉が国民に与えた生贄』)。この数年間、そのときの予測どおりに展開しているが、今回の同氏の論考を紹介したい。

今回の自民惨敗の原因は小泉氏の劇場型政治による。1918年、英国のロイドジューンズが行った「クーポン政治」と同じもので、大衆は彼の「見世物」(小泉氏の手法そのもの)に酔ったが、ロイドジョーンズの自由党は分裂を繰り返して消滅。その後英国は政権交代が自己目的化して、その間に国力は衰退。真にイギリス労働党が政権担当能力を身につけたのは戦時下、チャーチル首相の挙国一致の呼びかけにより、保守党との連立を行ったとき。

要するに今回の民主党のように、政権担当を一度も経験していない政党は、マニフェスト教条主義に陥って、現実から乖離した判断と行動になる。今回、国民は民主党を選んだのではなく、自民党を拒絶しただけ。これを勘違いするとニッポンはまずい事態に陥る。

特に対米関係においては、鳩山、菅氏らいわゆる団塊世代はアメリカに対して固定観念的に独特の被害者意識的コンプレックスを抱えている。しかし彼らの思考には国際関係における「力(パワー)」の要素をほとんど無視し、観念論に落ちている。あえてアメリカと「対等な関係」などと主張するのはコンプレックスの裏返しであり、危険である。

彼らのマニフェスト政治はイギリスを模範としているが、イギリスとニッポンでは政治家と官僚の関係など、その発祥から歴史まで、まったく異なる。そのイギリスを模倣することは原理的に不可能なこと。しかもそのイギリスの議会政治そのものが深刻な苦境に陥っている。そのイギリスですら真の二大政党制が確立するまでには膨大な時間がかかり、苦渋に満ちた学習期間が必要なのだ。

今回の民主党の社会主義的政策は1981年のフランスのミッテランの失敗と同じものであり、当時フランスは株価が暴落、外資が引き上げて、税収も激減、フランス経済は深刻な事態に陥った。しかしミッテランはその後現実に即した政策へと転向。かくして2期14年の長期政権を保った。民主党にもマニフェスト教条主義ではなく、実地で、修羅場をくぐって学習をして欲しいが、果たして今のニッポンにその時間を与える余裕があるかどうか。

以上、まことに同意。Dr.Luke的には今回の鳩山内閣は「脳内空転内閣」とも名付けたいところだが、これから確実に到来するであろうニッポン経済の惨状において、彼らはおそらく当事者能力を喪失してしまうだろうと懸念している。国民がアホなのか、政治家がアホなのか。いつも言っているが、合わせ鏡に過ぎないのだ。

追記:イギリスとニッポンの一番の違い。それはイギリスでは優秀な人材はまず政治家を目指す。対してニッポンでは官僚なのだ。政治家は要するにアホでもなれるわけ。

あと立花隆氏による「小沢一郎"新闇将軍"の研究」も面白い。ぜひご一読を。

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エシュコル

やはりあの時に分裂してでも、自民党と大同団結すべきだったのだろうか?

  • 2009/10/14 17:22
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