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曹操の魅力

『三国志』に完全にはまった。魏の曹操、蜀の劉備、呉の孫権、この三人の英傑のうち誰が一番魅力があるか・・・。そう、『白い巨塔』の里見修二より財前五郎を好むDr.Luke的には、『演戯』における悪役曹操なのだ。誤解により人を殺しても平然としている男。天子すらも利用し、狡猾にして策士、治世の能臣、乱世の奸雄。奸智に長け、人を裏切ることはあっても、人に裏切られることは許さないと公言する冷酷無比な男。しかし、これがなぜか憎めない男なのだ。

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「人中に呂布あり、馬中に赤兎馬あり」と讃えられた、最強にして熱血漢の、しかし純朴・ナイーブな戦士、呂布が捕えられた際、その第一の忠臣張遼は当初、呂布を決して裏切らないと主張していたが、曹操が縄目を解き放つや、一転曹操に忠誠を誓う。その時曹操はあえて階段から転げ落ちるようにして彼に近寄り、彼の手を握って言う、「その言葉を待っておったのじゃ」と。いや、実に見事な役者、人心掌握術に長けている。

さらに彼は、共に逃亡したかつての盟友、今は呂布の軍師洪台に言う、「わしはこの世の道徳観念などはとっくに捨てたのじゃ。わしは奸雄と言われる。正論を吐く者は殺され、君子となった者は侮辱され、殺されることすらある。わしが目指すのは志を実現する奸雄じゃ。古より、大奸は忠に似て、大偽は真に似るとある。忠義も奸悪もうわべでだけで区別がつくものではないのじゃ。そなたたちはわしを見誤った。わしはわしであり、どう思されようとかまわんのじゃ」と。

最後の最後まで洪台に対して自分に従うことを求めるのだが、彼は拒否する。諦めた曹操は彼に「わしが見送ろう」と言って、刑場に手をつないで出向く。そして尚も最期に洪台の翻意を促すのだが、彼は毅然として拒否する。彼は自然を観つめて、「美しい」とつぶやくや、その首が飛んだ。その時、曹操は、なんと涙するのだった。

その曹操も「赤壁の戦い」で諸葛亮の策に敗北を喫するのだが、関羽に情けをかけられて助けられながらも、けっして悪びれることがない。彼は自恃として敗北から立ち上がりつつ、時を待つのだ。その関羽の義兄である仁徳の劉備は曹操に対抗して、「自分は人に裏切られることはあっても、人を裏切ることはない」と主張し、その徳によって生きるが、しかしその彼も最期は狂乱して果てる。劉備はあまりにも理想主義者であり、乱世には残念ながら通じなかったのだ。確かに彼の生き方に難をつけることは難しいが、私的にも劉備にはあまり魅力を感じない。長い歴史のスパンで見ると、彼は、ちょうど狂言回しのように曹操のアンチテーゼというか、引き立て役としての役割を担っていたようだ。

曹操は、実はかなりのインテリにして詩人、法制度の整備などにも功績がある。いわゆるソーシャル・エンジニアリングの腕前は相当だったのだ。『演戯』では劉備が主役扱いだが、三国時代を制し、魏から晋へと統一できたのは曹操の功績だ。彼はちょうど信長・秀吉・家康の三要素をバランスよく配合され、その役割を演じたパーソナリティだったように思われる。いや歴史とはまことに人そのものだ。

still the story goes on....

陰の声:なんとなく安倍さんには呂布的な感じもしている。曹操的人物と言えば、やはり小沢さんだろうが、彼はCIAによりすでに潰されてしまった。というか、わが国では受け入れられないのだ。民主党の方々は、まあ、孫権。単純オツムで若すぎたのだ。要するに社会運営とは、いつも書いているが、愛に富み、優しく柔和な、しかしメスの切れない外科医と、冷酷で打算的、野心家でカネと女に入れ込むが、しかしメスの切れる財前五郎と、あなたならどちらに切ってもらいますか?という問題提起なのだ。

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