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本日の一冊と一枚

先にユダヤ人の血統的正統性が認められたとの研究に関するニュースを紹介した(→こちらこちら)。アーサー・ケストラーの『第十三氏族』(邦訳『ユダヤ人とは誰か』)においていわゆるアシュケナジー・ユダヤ人が11世紀頃のユダヤ教に改宗したハザール帝国の末裔であって、旧約聖書のアブラハムの血統的子孫ではないとする説を否定したものだ。この論点はキリスト教徒の間においてもきわめてエキセントリックな反応が生まれる。いわく、現イスラエルはアシュケナジーのシオニストによる策略によって誕生したものであって、聖書の預言の成就ではない、云々*1。極私的には素直に聖書預言の成就と信じている者であるが、たとえばひとつの根拠はすでに紹介したが、「1948年」の聖書的意味を参照されたい(→こちら)。

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たまたま本屋で見つけた大部な本書、『ユダヤ人の起源-歴史はどのように創作されたのか』。なんと3,990円!きわめてマイナーな出版社から出ている。しかしつい触手が動いてしまった。内容をざっと見ると、ケストラーを踏襲しており、旧約聖書の記述にあるダビデやソロモン、さらにAD70年以降のディアスポラなどもいわゆる聖書預言の成就ではないとするようだ。つまりユダヤ人の迫害の歴史や、そもそもユダヤ人なる人類の一部が創作されたものとする立場だ。よって現イスラエルも人為的に創作された国家となり、聖書預言の成就でもなんでもないとする。イスラエルでヘブル語で出版され世界13か国語に訳されて、欧米ではかなりの反応を得たようだが、ニッポンではほとんど注目されていない・・・。ちょっと気合を入れて読んでみるつもり。

著者紹介:

サンド,シュロモー(Sand,Shlomo)
1948年にオーストリアのリンツで生まれた。両親のイスラエル移住にともない、イスラエルで長じ、教育を受けた。テルアビブ大学ではじめた歴史の高等教育をパリの社会科学高等研究所で終えた。1983年に同研究所でジョルジュ・ソレルの思想に関する博士論文を仕上げ、これはただちに出版された(『政治過程の幻想』、パリ、La decouverte,1984)。1984年以降、テルアビブ大学で現代ヨーロッパ史を教える。専門領域は近代社会における知識人の思想および地位、歴史と映画の関係、さらにナシオンの結晶化過程におけるナシオン観念の存在に及ぶ。これらのテーマにつき、フランス語・英語・ヘブライ語で多数の著書と論文を発表した。

■参考:いまユダヤ人の起源が大きな話題になりつつある

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最近、BENI,JUJU,noon,樹里からんなどの女性ヴォーカリストによるカバーアルバムが光っているが、また一枚追加してしまった。青山テルマの"MY COVERS"。なかなかイケル・・・。

*1:実はユダヤ人やイスラエルに対するこのようなエキセントリックな反応自体がある種の霊の働きによるものなのだ。それは、すなわち、超自然的に神の民を嫌悪する、理由なき憎悪と敵意の感情を煽るのだ。現在、ヨーロッパで吹き荒れている反ユダヤ主義もその霊の働きによる。神に拒絶された者と受容された者の葛藤、すなわち原型的カインとアベルの相克の現れである。

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