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晩春田園雑興十二絶其十-范成大

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雨後の山家 起くること較(やや)遅く
天窓の暁色 半ば熹微(きび)たり
老翁は枕を欹(そばだ)てて 鶯の囀(さえず)るを聴き
童子は門を開きて 燕を放ちて飛ばしむ

雨上がりの山小屋の朝、いつもより少し遅く目覚め、ふと見上げると天窓から差し込む朝の光は何となくぼんやり薄暗い。
老境の私は枕を傾けて鶯のさえずる声に耳をそばだて、子供の召使は入口の戸を開け放して燕を外に解放してあげるのだ。

時間がものすごくゆったり流れる中で、まだまどろんでいる私が味わっている晩春の朝の気だるさ感がたまらない。まさにアイドリングの快楽の極地。山小屋は静まり返り、鶯の鳴き声が遠くから聞こえる。その声を床に横たわったまま聴くことの贅沢さ。召使の子供は屋内に巣をかまえた燕を外に解き放つ。私も、身は山小屋に伏してはいるが、心は燕といっしょに空に解き放たれるのだ。晩春の朝のなんとも言えない実にリッチな時間だ。

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