ChatGPTとのいくつかの対話実験

先の記事では「AIは内積である」と切り捨てたので、ちょっと入れ込んでる向きには無粋であったと思い、極私的にいくつか実験してみた。それなりに面白い結果が出ており、お付き合いするのはけっこう楽しいかもしれない。


その1:命題論理について、「2=1ならば2^2=1」は真なる命題か?

まあ、普通の人は否であろう。が、論理学では真だ。

それは、命題「p→q」は「¬(p⋀¬q)」すなわち「¬p∨q」である。その真理値はこの表のとおりだ。

そこで「2=1→2^2=1」の真偽をChatGPTについて問うと-

・ChatGPT:「2=1ならば2^2=1は真なる命題か?」という命題を分析しましょう。(←これは命題ではない!)

まず、命題は「2=1ならば2^2=1」という形です。この命題は「もし2が1に等しいならば、2の二乗は1である」と言っています。

前提の部分:「2=1」というのは明らかに誤りです。2は1と等しくないため、前提が偽です。

結論の部分:「2^2=1」というのも誤りです。2の二乗は4であり、1ではありません。

命題の形式は「AならばB」という形です。論理学では、命題「AならばB」が真であるための条件は、次の2つの場合に成立します:

Aが真で、Bも真である。

Aが偽であれば、Bが真かどうかに関係なく、命題全体が真となる(これは論理学の「偽から何でも導ける」原理に基づいています)。

ここで、前提(A)「2=1」が偽なので、この命題は論理的に真となります。理由は、偽の前提から何でも導けるためです。

つまり、命題「2=1ならば2^2=1」は真なる命題です。

・・・と正しい判断をしている。しかしこれはAIが考えているわけではない。そのような判断をする回路が学習(パラメータ値の調整)されているだけである。

その2:インドの天才、ラマヌジャン(上の画像)。彼は正規の教育を受けていないが、次の無限級数など数々の定理を”発見”しているが、インドのなんとかいう神が教えてくれるのだとか。普通になんらかの論理の連鎖を追う結果ではないのだ。つまり天啓の公式である。

で、果たして、こういった論理を超えた天啓の公式をAIは自ら見出すことができるであろうか?

実験しましたが、できませんね! 既存の知識を組み合わせるだけです。

大学入試問題ではある条件群を与えて、それらの組み合わせで解答にたどりつくが、AIには容易だ。医師国家試験や司法試験なども同様である。

それはすでにあるマトリックスが組まれているからだ。

あるいは医学検査写真から腫瘍発見や細胞同定をすること(パターン認識)も得意だ。最近では細胞写真からいままでの分類に入らない異常細胞を見出したという報告もある。

これらの面の能力は人間を凌駕するであろう。が、ラマヌジャン的能力はAIには原理的に無理なのだ。

卑近なところでもあなたの頭の中に去来する諸々の想念は一日に数万件。そのどれを選び取るか、それがあなたの言動を、そして人生を決めるのだ。これもAIはなし得ない。いや、そのフリはできるかもしれないが・・・。

その3:わが漢詩[1]一石は私の号、EinSteinである。ちょうど聖書的にもうまい号となった。についてChatGPTクンの回答:

Q. この漢詩は誰のものですか?またその意味を教えて下さい。

世事都訛 一石

當年風貌細腰多

浮客痛時髪己皤

何耐人生胡蝶夢

到今可識事都訛

ChatGPT:

この漢詩は、特定の有名な詩人のものとしては記録されていないようです。しかし、詩の文脈や表現から、古典的な漢詩の影響を受けた近世・近代の漢詩である可能性が高いです。(←いい線、いってる)

テキストの画像のようです

詩の意味(大意)

詩の内容を解釈すると、人生の無常や時の流れによる変化を嘆く詩のようです。(←ややずれている、「訛」の意味の取り違いだ。それはフェイクの意味)

世事都訛 一石

世の中の出来事はすべて誤りや変化に満ちており(「都訛」は「すべて間違い」や「すべて偽り」の意味)、まるで一石(石を投げ込んだように波紋が広がるように変わりゆく)。(←一石を作者と認識できていない)

當年風貌細腰多

昔は、風采もよく、細腰の美しい人が多かった(若さや美しさが満ちていた時代)。

浮客痛時髪己皤

浮き世の旅人(=自分自身)は、時の流れを嘆き悲しむうちに、すでに白髪になってしまった。

何耐人生胡蝶夢

人生は「胡蝶の夢」(荘子の夢の比喩:現実と夢が曖昧で、はかないもの)にすぎないのに、どうしてこれに耐えられようか。

到今可識事都訛

今になってようやく、世の出来事がすべて誤りや変化の連続だったことがわかる。

全体の解釈

この詩は、若き日の栄華や美しさが過ぎ去り、歳をとった詩人が、世の無常や人生のはかなさを嘆いている内容です。特に「胡蝶の夢」という表現からは、荘子の思想を背景に、人生が夢のように儚く、現実と幻の区別がつかないという深い悟りが表現されていると考えられます。

●その4:逆に漢詩を詠んでもらいます。

Q. 春が巡り、またひとつ年齢を重ねることについて、無常を覚えつつ、鶯の声を聴き、花を愛でる詩人の心境を七言絶句の漢詩で読んでください。仄起こり、押韻は五微韻の条件です。

ChatGPT:

春望偶成

年年又見一春歸,(○○●●●○△) 
老去花前自歎遲。(●●○○●●△)
鶯語聲聲如舊日,(○●○○○●△) 
東風猶得伴余期。(○○○●●○△)

詩の解釈

第一句:また一年が巡り、春が過ぎ去ってゆくのを見送る。
第二句:老いていく自分が、花の前で遅れをとるように嘆く。
第三句:鶯の声は、昔と変わらず響いている。
第四句:それでも東風(春風)だけは、まだ私のもとへやってきてくれる。

この詩では、春が巡るたびに年齢を重ねる無常感を抱きながらも、自然の美しさを愛でる詩人の心境を表現しています。鶯の声や春風に、過ぎ去る時間と変わらぬ自然の対比を込めています。

(←仄起こりになっておらず、押韻も間違っているが、というより韻の踏み方を知らないかも。まあ、それっぽい詩にはなっている・・・)

その5:数学の証明問題-√3が無理数であることを証明してください

(←なるほど、ちゃんと背理法を使っていますねー。まあ、これはほぼお経のようなレベルですが・・・)


以上、5つの実験を通して分かることは、すでに得ている知識と照合して何らかの人間側に意味のある、あるいは投影や感情転移をし得る出力をすることは可能であるが、何もないところからいきなりラマヌジャン的公式を作れと言われても、それは無理だということだ。

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1 一石は私の号、EinSteinである。ちょうど聖書的にもうまい号となった。

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