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Dr.Lukeの一言映画評

ファイル 1799-1.jpg海堂尊原作、菅野美穂主演の『ジーンワルツ』。

帝華大学医学部産婦人科の助教、曾根崎理恵。彼女は大学病院で教鞭をとる傍ら、産科医院・マリアクリニックの院長代理も務めていた。体外受精や代理母出産の必要性を説く理恵は、大学からは要注意人物扱いされている。准教授の清川は、そんな理恵に惹かれつつも、彼女の言動を危惧していた。そんな中、マリアクリニックでの仕事に専念するため理恵が大学病院を去る。クリニックには、様々な事情を抱えた4人の妊婦が通院していた…。

なかなか人間ドラマとしてはよくできていた。赤ちゃんの誕生の緊迫した場面設定なども、現実感とスリルがあり、それなりに感動する。しかし産科医療の問題を抉るという点では、やや現実の描き方が足りないか。

かつて胎盤剥離のオペに失敗し、殺人罪で逮捕された産科医師をモデルとしているようだが、大学病院や学会の体制や、市井の産科病院の現状などに対する切込みが足りない。都内某市で大規模な産科病院の副院長をしている女医の友人がいる。彼女もかつて医局を追放されたのだが、彼女は言っている、「あたしはもう患者なんか診たくない!」と。この言葉に万感が篭っているのだ。患者とマトモに向き会う医師がかえって壊れていく現実。

加えて、『バチスタの栄光』では、死体をMRIなどで死因特定するAIなどの最新の技術の紹介もあったが、今回は医学的なテクニカルな面がほとんどなく、この点も物足りないか。人工授精や代理母問題は技術の進歩と共に生まれた課題であり、社会や法律が追いついていないわけで、菅野美穂がその隙間に食い込むチャレンジングな女医を好演していた。

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