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ケインズの予言と人間の欲望

と題するコラムが日経夕刊にあった。ケインズは1930年の論文で「技術革新によって週15時間程度の労働で済む社会になる」と予言しているとのこと。しかしながら、現実は昨今年中無休の店が実に多くなっていると指摘。値段を下げることにより、多量販売が必要となり、かくして休む間もなくなるわけだ。コンビニなどの店長の勤務形態などはまことにスゴイものがある。マクドナルドの店長が名ばかりの営業職とする判決も出た。

あるいは今晩のNHKの『クローズアップ現代』でソフトのバグによって社会機能がマヒする危険性が高まっているが、その原因が技術者の不足。30万人必要なところ、10万人不足と推計されている。彼らはほとんど徹夜で納期に追われて、精神障害や自殺に追い込まれるようだ。実際SEは、名前は格好イイが、30歳程度で使い捨てなのだ。プログラミングは趣味ではそこそこ楽しいが、これを仕事にしたらほとんど拷問だろう。

かくして技術革新によって世の中が便利になり、あらゆるモノが思うままに手に入る社会になるほどに、人間性疎外が起きてくる。例えば、先のマクドナルトの店長も別の店に行けば客となるわけで、客としては安さと速さと無休を求めるだろう。こうして因果は巡り巡って、結局は人間性を疎外する。なぜか。

日経のコラムを書いたお茶大の先生は、「ケインズは人間の経済的欲望が無限大である点を見逃したからである」と結論している。けだし、そのとおり。要するに肉(flesh)に仕えているのだ。かくして自らの欲望が巡り巡って自らを疎外する、それも際限なく・・・。自分の足を食べるタコが蛸壺にはまった状態―これが現代だ。

その商品とは、金、銀、宝石、真珠、麻の布、紫の布、絹地、赤い布、あらゆる香ばしい木と象牙細工、そして、高価な木材や、青銅、鉄、大理石などでできたあらゆる器、肉桂、香料、香、香油、乳香、ぶどう酒、オリーブ油、麦粉、小麦、家畜、羊、馬、馬車、奴隷、人間(原語:人の魂)である。

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