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灯台元暗し

悪性のがんを引き起こす遺伝子自体に転移を阻止する働きがあることが分かった。名古屋大の成果。

「肺腺がん」を引き起こす悪性のがん遺伝子に、がん細胞の転移を抑制する機能があることを名古屋大の高橋隆教授(分子腫瘍学)らの研究チームが発見し、仕組みを解明、15日付の欧州科学誌エンボジャーナル電子版に発表した。

 肺腺がんを引き起こす遺伝子「TTF-1」が陽性の患者は、陰性の患者と比べて手術後の生存率が高いことが知られていたが、その仕組みは分かっていなかった。

 グループは、TTF-1が「ミオシン結合タンパクH」という遺伝子を働かせている点に着目。この遺伝子が作るタンパク質が、リン酸化酵素と結合し、細胞骨格を変化させる「ミオシン」の活性化を抑制し、がん細胞の転移を抑えることが分かった。

 一方、TTF-1が陽性のがん細胞でも転移が進む場合がある。これは、ミオシン結合タンパクH遺伝子のDNAが、メチル基という分子がくっついて遺伝子が働かなくなる「メチル化」反応を起こし、タンパク質を作ることができなくなるのが原因ということも解明した。

 高橋教授は「ミオシン結合タンパクHの働きを持つ薬が開発できれば、肺腺がんの転移抑制の新たな戦略が期待できる」と話している。(2011/11/16 0:06)

ちなみにいつもどおり、このTTF-1*1の分子構造を紹介しておく。

ミオシンは筋肉や骨格構造の基本となるタンパク質で、アクチンとともに筋収縮を行う。それにしてもネイチャーは面白い。あるいはマッチポンプとも言えるわけだが・・・。

*1:Thyroid Transcription Factor 1

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