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「見えない貧困」がこの国を蝕む

副題:「世間」も「家族」も崩壊した日本に進行する恐るべき事態

と称する、下にも紹介した佐藤優氏と作家の桐野夏生氏の対談が『文藝春秋四月号』に掲載されている。神を知らない日本人の唯一の価値観の基準が「世間」だったのだが、その世間そのものが壊れてしまった現在、「公」の視点を持ち得ず、よって個人が個人だけを拠り所とし、「私」の視点の価値観に生きるようになり、これがために給食費の未払いなどが生じているとする。

その「公」の崩壊の様は、佐藤氏が滞在したソ連の末期よりもはるかに深刻な病態であると言う。「共産主義国家」ソ連は崩壊したが、ロシアは崩壊しておらず、よって彼らはロシア人民としてのアイデンティティに基づいて、現在の強い指導者プーチンの下に復活しつつある。ロシアが蘇った原動力に金持ちが貧民に対して金をばらまく策があるのだが、これによって金持ちも共同体から浮くことなく、共に支持し合うことができた。要するにロシアは受け皿があったのだが、今のニッポンには何の受け皿もない。このあたりで、日ユ同祖論などが出てくるのだろう。つまりアイデンティティの拠り所が欲しいのだ。

日本にとって国家とは官僚が社会から搾取するシステムであると佐藤氏は喝破し、国家のそのものの存在意義が失われていると言う。そこから救い出すのは「物語」であると指摘。それは関係性である。佐藤氏はこう結ぶ:

人はそれぞれ物語を持っている。そして、複数の物語が共存する社会が望ましい、と私は思っています。他人の物語を理解し、その距離を測りあうのが、「世間」であり、「公共感覚」でもある。グローバリズムから身を守り、日本人の「縁(えにし)」の力を回復するには、文芸復興がまず必要なのかも知れません。

関係性の希薄化と物語の共有の欠如。これがネットやゲーム、さらにケータイで促進されているわけだ。個人が個人の中にカプセル化している自閉的分断化社会。「2ちゃんねる」あたりが流行るのはこの辺の病理を吸収するように感じられるからであろう。かくして悪魔的状況を呈している。日本はその中心からモラルが腐りつつあり、確実に崩壊過程に入っている。しかもニッポンキリスト教もほとんどシンクロしている。そこに「クリスチャン・トゥデイ」などの偽りが着実に侵入している。早晩ニッポンキリスト教も間違いなく崩壊することだろう。たとえ見かけは煌びやかに演出し得たとしても、実態はむしろ反比例する。本日のメッセージでも語ったが、時代はリバイバルどころではなく、サバイバルなのだ。

参考:基本的には私が10年前にある論考で指摘した事の成就である。
最近の日本に思う

Comment

Isaiah Ben Hur

「見えない貧困」とは心の腐敗でしょうか?

  • 2008/03/16 22:22
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Luke

サタンはモラルの破壊、つまり人々の良心に焼きごてを当ててマヒさせるのですね。良心が無感覚になることは恐るべきことです。これによって心の中に「腐れ」を生じさせ、「公」の破壊がなされます。あらゆる領域におけるニッポンの崩壊の兆しはすでに明らかですが、私はこの国とニッポンキリスト教は行き着くところまで行かないと、真の意味での悔い改めには至らないであろうと感じています。頑なさに比例して、現象面での悲惨を増すことでしょう。

  • 2008/03/17 08:06
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BlueGale

はじめまして。先生のHPを時々読ませていただいているものです。突然ですが質問があります。「最近の日本を思う」を読ませていただきました。その中に「自分がどこから来てどこへ行くのか」とありますが、どこから来たのかわかりません。基本的事項のようなのでQ&Aに書かず、ここで質問させていただきました。何卒よろしくおねがいいたします。

  • 2008/03/17 13:45
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Luke

はじめまして。
そうですね、「どこから来たのか」は、実は私も分かりません。サイエンスでは受精前は存在していないわけですが、体ができる前に霊魂としてどこかにいたのかも知れませんが、分かりません。お役に立てず、すみません。

  • 2008/03/18 21:47
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BlueGale

聖書を所々しかまだ読んでいないので、どこかにそれに関しての記述があるのかと思いお尋ねしました。ご回答ありがとうございました。

  • 2008/03/19 16:31
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