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CLIP:東京医科歯科大学が、がんの進行を制御する仕組みを解明―新しいがん治療に向けた標的分子を発見

細胞周期を制御する酵素DYRK2がガンの進行のメカニズムと関係していることを解明した。

 がんは1981年以降本邦の死因第一位であり、現在では二人に一人ががんにかかり、三人に一人ががんで亡くなるという深刻な事態となっている。
 がんによる死亡原因の9割はがんの転移であり、転移を抑えることができれば、がんの根治が望め、再発に苦しまなくてすむ可能性が高くなる。転移はがんがある程度大きくなって広がる(増殖・進展・浸潤する)ことで起こりやすくなる。がんがどのように増殖・進展するのかについては、これまでに多くの研究が行われてきており、その一因として細胞周期の異常が知られている。

 細胞周期はG1期、S期、G2期、M期からなり、細胞分裂に要する時間は細胞によって異なるが、それはG1期の長さに依存している。多くのがん細胞でG1期が短くなっており、結果として細胞分裂が活発となり、がん細胞がより増殖することが観察されている。しかしその仕組みはよくわかっていなかった。

 東京医科歯科大学難治疾患研究所・分子遺伝分野の吉田清嗣准教授の研究グループは、この細胞周期を制御しているリン酸化酵素として新たにDYRK2を発見した。DYRK2は転写因子c-Junやc-Mycをリン酸化し分解を促すことで、適切なタイミングでG1期からS期に移行していることを明らかにした。細胞からDYRK2を取り除くと、c-Junやc-Mycのリン酸化が見られなくなり、分解されずに蓄積することで、G1期が著しく短くなることが観察された。また、このような細胞をマウスに接種すると、腫瘍塊を形成することもわかった。

いつものようにDYRK2の分子構造を紹介しておこう(右クリックでメニュがでますので、ZOOMしてこの酵素の中に入ってください。あるいはマウスホイールを回してもOK。そこはひとつの神秘的な宇宙です。):


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