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辛夷香風-一石

森に入るや、濃い緑の中に年を経た蔓草。いよいよ夏だ。それにしてもなんという爽やかさ、風は汗で湿った肌に実に心地よい。まだ鶯が春を惜しむかのように鳴いている。ふと、花の香がぷーんと漂う。そう、こぶしの香だ。そんな夢見心地の初夏の朝、こぶしの美しい花弁も夏の風を発している。

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(七絶・平起式・上平声一東韻)

綠蘿(りょくら) 歳を經たり 碧烟の中
長く弄する残鶯 樹樹を遶る
森は靜まり 微かに涼にして 香は馥郁たり
辛夷の女華は 薫風を發す

(C)唐沢治

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