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卒研の季節-Cs137の食物からの摂取量の推定

このところ私にしてはけっこう忙しい。というのも、卒研の発表会が近づいているからだ。昨年まで外部被ばくによる発がん率の上昇率と、WBC(Whole Body Counter)による内部被ばく量から預託実効線量を推定した(pdf)。これは測定時点での内部蓄積量が今後50年間に生体に与える放射線量を示す。つまりポイント測定に過ぎない。

そこで今年はさらに具体的に汚染食物からどの程度の内部蓄積をするか、セシウムについての推定を行っているのだ。ところがこれが微分方程式を解いて、次のような数式を導き、年齢、体重、食事量、食品汚染度を入れると内部蓄積量の時系列が得られる。モデルはICRP67のパラメーターによる。

バンダジェフスキー博士のチェルノブイリの調査によると40Bq/kg程度で心電図に異常が見られる*1。例えば、下に示したのは、体重70キロ、成人男性、10Bq/dayのCs-137の摂取をする場合の蓄積量。2年程度で平衡に達する。この時の平衡値は約16Bq/kgだ。一応確定モデルと、摂取Cs量を正規確率過程(乱数N(10,22)で与えた)とした確率モデルによる推移を示す。両者とも平衡量はほぼ同じ。これをSv/Bq換算するといわゆるSvが出る仕組みだ*2
ファイル 3905-1.jpg
ファイル 3905-2.jpg

ではこの程度のCs-137を摂取するのはどの程度の食物を摂ることに相当するのか。例えば次のグラフは東京産の食品のCs-137の量の時系列的推移である。

ファイル 3905-3.jpg

これを見ると2011年3月辺りは高い数値が出ているが、ほぼ規制値未満に収まっている*3。このグラフから学生諸君に安全な食品汚染値を逆算してもらおうと言うわけだ。さて・・・。

・・・といった内容でまとめさせているのだが、これがなかなか・・・。なにしろ微分・積分などは見たことがない諸君。日常生活では「+-X÷」で済んでしまうと言うことで、これらの数式などは宇宙語に等しい・・・。

かくしてDr.Lukeは彼らをして無事卒業させることはできるのでありましょうか?

*1:「放射性セシウムが人体に与える 医学的生物学的影響: チェルノブイリ・原発事故被曝の病理データ」。昨年の大学院の演習で英語原著論文の輪読を行ったが、英語がラフで、やや分析も粗いところがあるが、基礎医学的と言うよりは解剖学的所見が中心の論の展開をしている点で重要だ。
*2:単位はKg当たり。意味は実効預託線量なので、今後50年に浴びる放射線量となる。
*3:規制値は内部被ばく量が年間1mSv程度となるように逆算したものだ。

Comment

坂井能大

微分積分とか懐かしいです(笑)
食べて応援したい方の仲間入りは仕方がないですが、避けられないと思われます。

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