夜雨寄北-李商隠
- 2013/10/31 08:10
- Category: 漢詩
- Tag: 漢詩 李商隠 雅歌
君は帰期を問うも 未だ期有らず
巴山の夜雨 秋池に漲る
何か当に 更に西窓の燭を剪り
却つて話らん 巴山 夜雨の時なるべし
私訳:
いつお帰りになるの、とあなたは問うが、いつになるやらその時は分かりはしない。
ここ巴山の夜の雨は、秋の池を漲らせて降っている。
いつか西向きの窓辺に寄り添いながら、二人だけで夜更けまで灯心を切りつつ、
いまここ巴山に降る雨(私の心)を語り合えるだろう。
漢詩の世界は基本的には男のもの。李白と杜甫のように男と男の友情は詠われても、男女の恋愛的な詩は少ない。その中で光るのが、前に書いた、李商隠だ。非常に繊細かつ精緻な構成で美しく男女の心の機微を詠う。この詩も遠く離れた地で妻を想う詩。
一節には
ちなみにここでの「雨」が宋玉「高唐の賦」にある巫山神女の故事によるもので、懷王と交わった後、神女が「暮には行雨とならん」とどんな時でも一緒にいるといった意味を持つ雨である。
として、妻ではなくて秘められた女性だと言う説もある。いずれにしろ、今この時の自分の気持ちは、かの時に振り返ってじっくりと語り合うことができるだろう、との面白い構成だ。
何か、ある種、主とお会いした時、今の私たちの心を振り返るかのような気分にもさせられる。そう、私たちの人生は『雅歌』にあるように恋愛の情で貫かれているのだ。ややこしい神学論争だの、なんとかムーブメントや、教団の教勢を伸ばすだの、理事会や役員会の決議とか、なんとか決起大会だの・・・。彼らにはこの李商隠の詩は分かるまい。嗚呼、何と興ざめにして、無粋なこと、ニッポンキリスト教・・・。
あの方が私に口づけしてくださったらよいのに。あなたの愛はぶどう酒よりも快く、あなたの香油のかおりはかぐわしく、あなたの名は注がれる香油のよう。それで、おとめらはあなたを愛しています。
私を引き寄せてください。私たちはあなたのあとから急いでまいります。王は私を奥の間に連れて行かれました。私たちはあなたによって楽しみ喜び、あなたの愛をぶどう酒にまさってほめたたえ、真心からあなたを愛しています。-Song 1:2-3
Salt
いいですね。さすがルークさん、わかってらっしゃる。
雅歌はsong of songs
揺り起こしたり、かき立てたりする宗教はごめんです。