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遣懐-杜牧

前に私は『世事都訛』と詠った()。


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世事 都(すべ)て訛たり  一石
當年 風貌 細腰(さいよう)多し
浮客 時を痛む 髪己(すで)に皤(しろ)し
何(なん)ぞ人生に耐えん 胡蝶の夢
今に到り識(し)る可(べ)し 事都(すべ)て訛(か)なるを
(七絶・平起式・下平声五歌韻)

若い頃はみなスリムだったが、浮世を生きるうちに、非情にも髪も白くなった。
どうしてこのような人の世に耐えることができるだろう、すべては胡蝶の夢なのだから。
今、この歳になると分かるのだ、世の物事はすべて偽り事(ヤラセ)であると。

ちょっと若かりし頃を振り返りつつ、今の自分を客観視しているツモリなのだが、これとよく似ている境遇を杜牧も詠っている。

懐いを遣(や)る  杜牧
江湖に落魄(らくはく)して酒を載せて行く
楚腰繊細(そようせんさい) 掌中(しょうちゅう)に軽し
十年一覚 揚州の夢
贏(あま)し得たり 青楼薄倖(せいろうはくこう)の名

江南地方で遊び暮らしていた時にはどこに行くにも酒樽を持参したもの、
楚の女たちのようなたおやかな腰の感触、彼女たちは手の平に軽く載るようだった。
ハッと揚州で過ごした十年間の夢から覚めてみると、残ったのは青楼での浮気男の評判ばかりだ。

昔、楚の国ではその王が腰の細い女性を寵愛したことを以て、細い腰は美女の条件とされた。漢の成王の愛妾趙飛燕は体が軽く、手の平で舞うことができたという逸話を受けている。太和七(833)年、31歳の杜牧は楊州に赴く。この地は物資輸送の拠点、商業都市として繁栄し、無数の妓楼があった。若い杜牧はそこに入り浸り酒色にふけった。その若い頃の懐かしさが前半に込められ、後半には夢から覚め、分別をわきまえる年齢に達した彼の追憶と悔恨の甘酸っぱい感情が込められている。誰しもこのような気持ちを抱きつつ、年を重ねているのだ・・・。

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