Entry

トップ > 映画 > Dr.Lukeの一言映画評

Dr.Lukeの一言映画評

ファイル 540-1.jpg17歳のカルテ』。スザンナ・ケイセンンの実際の精神病院入院体験にもとづく小説の映画化作品。アンジェリーナ・ジョリーが深い疎外感を抱く反社会性人格障害者の鬼気迫る演技をしている。

実はこれ「精神保健学Ⅱ」の講義で上映。要するに文字だけ追ってもイメージが持てないし、専門用語を暗記してもつまらない。若い学生たち(7割が女子学生)にビョーキのイメージを持ってもらう目的だったが、これがかなり好評。内容はけっこう深いのだが、同じ世代の悩みを抱えた若者として、感情転移(思い入れ)ができるようだ。

60年代の壊れたアメリカ社会で自分の居場所を見出せずあえぐ彼女たち。今の時代と実によく似ている。自分が狂っているのか、社会が狂っているのか・・・。ある種村上春樹の『ノルウェーの森』的かも知れない。種々のビョーキを抱えた人々が精神病棟と言うカプセルの中で互いに傷つけあい、また心を通わせあう、そのダイナミクスを描いている。面白いのは、『カッコーの巣の上で』でもそうだったが、ドクターやナースが冷酷な非人間的存在と見えてしまうこと。患者たちの方が血の通った人間性豊かな世界に住んでいると見える。

まあ、倒錯の世界なのだが、しかし彼らの心の叫びに対してはある種の共鳴する要素を感じることができる。病み(闇)の中に住む事がいかなる事態か。これはわれわれの想像をはるかに超える経験なのだ。

追記:上映後、PC演習での事。超接近状態でPCの操作を指導していたところ、大きな目で私の顔を見つめつつ、「センセイ・・・」と。「うん、告白か?」と思いきや、教室中に響くような声で「センセイって、眉毛の処理してるんだあ~」と。「おいおい、そんなに感動するなよな、眉毛がやたら長かったり、耳毛や鼻毛が出るとオジサン化の末期だから、気をつかっているんだからさあ」と心の中で思いつつも苦笑。また私は臭いにはかなり敏感で、加齢臭や口臭を嫌うし、オジサンたちのやたらと刺激の強いコロンも好まない(実際アレは悪臭だ)。ほのかに香るグランマリン系と決めている。しかしこのアッケラカンが彼女たちの健やかさの証拠なのだ。

Access: /Yesterday: /Today: