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金融情勢オン・ザ・エッジ

ダウは金融法案の修正復活に期待して500ドル近く戻した。日経も200円近く戻している。しかし法案否決の理由が11月の選挙をこわがって、税金投入はできないとのこと。何とも自分本位だ。バブルを作って壊した本人が何も責任を取らず、自分だけは助かりたい、というわけだ。

元々アメリカの双子の赤字を支えていたのは、世界から集まるカネだった。アメリカはカネが自国へと還流するシステムを、高度の数学を駆使したデリバティブなどの金融派生商品を開発して、作り上げてきた。彼らは流れ込む他人のカネで贅沢三昧だったわけだが、その根底には"信仰"がある。すなわち「パックス・アメリカーナ」の幻想。世界の覇者アメリカへの投資ならば安全だ、という思い込み。かくのごとくに、メッセージのバビロン・シリーズでも指摘したが、すべては信仰の問題なのだ。

世界に金融派生商品だけで6京円あるらしいが、それは幻想。カネ自体は桁がひとつかふたつ落ちる。つまりは信用創造というカラクリで膨らませられているに過ぎない。100万円の現金があり、それをA1銀行に預けると同行は10%の準備金を日銀の口座に積んで、90万を貸し出す。それを借りた人がA2銀行に預け、同行は同じく81万を貸し出す・・・と繰り返しますと、無限等比級数ですね。総額は100/(1-0.9)=1000万。つまり10倍。それを支えるのが信用、つまり信仰。

これが揺るぐならば膨らんだ風船はドミノ倒し的に一挙につぶれる。なぜなら元々カネはないからだ!これでそれぞれが損を最小限に抑えるためにマーケットからカネを引き上げる。最悪の場合、銀行の取り付け騒ぎとなる。かつて(1927年)何とか言う蔵相が東京渡辺銀行が破綻と失言したため、一挙に不安が爆発し、取り付け騒ぎが起こり、昭和大恐慌へとつながった。サブプラの破綻、ドルの暴落、アメリカの覇権の終焉を予言した副島隆彦氏は、さらに日本でも取り付け騒ぎと預金封鎖が起こると予言している。その根底にある心理は「自分だけは助かりたい」である。

かくしてアメリカ議会が今回やったような自助目的の意思決定と行動は、回りまわって自分の首を絞めるだけ。鍵は"信仰"を維持すること。つまり人心の安定を図ること。高橋是清はモラトリアムを実行し、表だけ刷ったカネ、つまり見せ金を多量に用意して恐慌を抑え込んだ。現在でも世界の中央銀行はドルを多量に市場に供給している。日本でも当面はマネーサプライを増やすこと。前に日銀の量的緩和の解除は時期尚早と指摘したが、経済のド素人である私の懸念も当たってしまったようだ。

90年代のバブル崩壊も不動産融資総量規制をきっかけにカネの流れが絶たれて、不動産価格が暴落したためだったが、この時も世論やマスコミはバブル=悪として叩いた。当局も経済制御が常に世論に振り回されて遅いのだ。しかし、大衆は愚かなもの、カネは回りまわって自分に返ってくることを知らないだろうか。経済はビールと同じで、適度に泡がある時においしいのだ。ニッポンの場合、たぶんに妬みやそねみが根底にあるのだが、今回の事態に対しても、米政府や日本政府・日銀が小さな利益優先のあげく大義を見失って、対応を誤らないことを祈る次第。経済に強いと言われる麻生さんも真価を発揮して欲しいところだ。

あなたがたは立ち帰っておだやかにしているならば救われる。安らかに信頼していることにこそ力がある。

追記:世界の株式時価総額は8月末で49兆628億ドル(約5,100兆円)、昨年10月末に比べ14兆ドル減少。9月末の世界の時価総額は42兆ドル前後まで減少している公算が大きく、昨年10月末のピークの三分の一に当たる21兆ドル(2,100兆円)前後が目減りした計算だ。(→http://archive.mag2.com/0000164032/index.html

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