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メルトダウン・オン・ザ・エッジ

今年の年初のメッセージで語ったキーワードは「混乱」だった。しかしここまでとは・・・。今般、一応G7で、強調の上あらゆる非常手段を用いてもメルトダウンを回避すると合意した。週明けの市場の反応が待たれるところではある。さて、今、世界で何が起きているか、簡単に解説しよう:

日本では90代年初頭のバブル崩壊以降、金利はゼロにしても借り手がつかなかった。B/Sの右(資産)が目減りした企業は、相対的に重くなった左(借入金)を返済していたからだ。金利ゼロで返済行動を取る、という経済学の常識を崩す現象だった。90年代後半から2,000年代にかけて年間30兆もの返済がなされた。この間日銀は当座預金を30兆に積み増しして、量的緩和策を取ったが、効果がほとんどなかった。つまり借り手がなかったのだ。かくしてカネが停留し、世の中に回らなかったのだ。

しかしその間も日本はGDPが成長した。経済主体は、政府、家計、企業、外国とあるが、そのどこかにカネが停留してはならない。日本の場合は停留したカネを政府の借金で公共事業として世に還流していた。これが成長の原動力だった。よく自民党のばら撒き体質が云々されるが、誰もが節約してカネを消費しなくなったら、日本経済は立ち行かない。橋本内閣は焦って財政再建を図って経済を縮小し、97年の拓銀破綻などを招いた。加えて国の借金の増えてしまったのだ!現在も財政出動は必須の経済政策である。今こそゼネコンを生き返らせる必要がある。

注:私は元締めが仕事を分配する日本式ワークシェアリングであるところのいわゆる「談合」は必ずしも悪くないと思っている。いわゆる競争入札は弱肉強食を煽り、企業の消耗を助長する危険性がある。

つまりB/Sの資産(左)が不動産の下落によって、右の借金が相対的に膨れ上がると言うデフレ状態にあっては、企業は借金返済を第一として、カネを使わない。よって誰かが使う必要があるのだ。これが政府の財政出動である。金融政策はすでに金利ゼロで何も出来ない以上、ケインズの理論が生きる。しかしフリードマンを中心とするアメリカのマネタリストたちは、流動性の緩和だけを叫ぶのだが、カネは供給されても、誰も使わないでは話にならない。この意味で、現在、諸悪の根源のように言われている公共事業をして需要を喚起して、政府がカネを還流させることは正解だった(確かに政府と地方の借金は脹れたが・・・)。

今、アメリカでもサブプライムローンの崩壊、不動産の下落で同じことが起きている。B/Sの左が縮小するため、右の借金が相対的に重くなり、そのため企業は返済を優先して、カネを使わない。銀行も自己資本率を維持するために、リスク・アセットを減らそうとして、貸し出しをしない。そのため経済全体に一種の「浮腫み」が起こり、カネが世で回らないのだ。それに加えてドルに対する信認が失われ、欧米の銀行では決済のためのドルが手当てできない。かくして金利が上がる(債券は下がる)。要するに、経済の流れが凍りついている。そこで各国の中銀は市場にひたすらドルを供給しているわけ。

経済主体である、家計、企業のいずれもが、自分だけは損をしないために、カネを回さない姿勢に入っているのだ。これが信用収縮を起こす。今回ブッシュは公的資金で資本注入を決定したようだが、これはマストの対策。自己資本率を高めて金融機関のマインドを温める必要がある。カネを還流すること。事実日本でも資本注入によって、7,000円台に落ちた株価もようやく回復し出した。

つまり私が前々から指摘しているとおり、すべてはクレジット(信仰)の問題なのだ。現状はクレジットがクラッシュして、人々の心が凍り付いている。これを溶かす政策が必要なのだ。傷ついたクレジットを涵養するためには人の心を温めること。この意味で、麻生さんの積極的財政出動策はポイントを突いている。今の時点で財政再建とか、公共事業を減らせとか、正義感ぶって叫ぶマスコミも大衆も、90年代にバブルを叩き、大蔵省が総量規制をしてから経済がどうなったかよく振り返ってみよ。いずれ回りまわって自分に戻るのだ。しかも縮小した形で。ちなみに小室直毅氏も指摘している、今はとにかく政府がカネを使うことしかない、と。

もっともらしく、大衆の歓心を買う、正義感ぶった言論やヒステリックな議論にはよほど注意しないと、それこそ日本も世界も「チャイナ・シンドローム(原子炉融解)」に陥るだろう。それは悲惨な光景を生み出すだろう。果たして・・・鍵は人々の心にある。

追記・ラビ・バトラのPROUTとも似ているが、このBlogでもかなり前に紹介したが、日本にはすでに二宮尊徳と言う財政建て直しの名手がいたのだ(→記事)。

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