Entry

トップ > 映画 > Dr.Lukeの一言映画評

Dr.Lukeの一言映画評

大学が始まり巡航速度に落ち着いています。午前中はプールとサウナ。午後は映画と。

ファイル 807-1.jpg

待望のジョン・ウー作品『レッドクリフPARTⅡ』。孫権軍は赤壁に要塞を築き、曹操の攻撃を迎え撃つ。孫権軍兵力5万・軍船200、対する曹操軍兵力80万・軍船20,000。圧倒的な力の差。しかし孫権の軍師周瑜は「集中力があれば小石で巨人も倒せる」と宣言。曹操の姦計により疫病に見舞われた孫権・劉備連合軍は分裂。劉備は去るも、諸葛孔明は残る。

自然の理を知り尽くす知将孔明は風を生かした火の作戦を取る。風向きが変われば、200の軍船で20,000の軍船を打ち破れる。その時を待つ孫権軍。曹操が欲しがる周瑜の妻小喬は、身ごもった身体をもって曹操に近づき、時間を稼ぐ。じりじりと緊迫した時間が過ぎる。同盟を破棄した劉備とその部下張飛や関羽の援護はないのか?果たして風向きは変わるのか?

と言うわけで後はご自分でご覧ください。ジョン・ウーらしい派手な炎のアクションとその中に国や家族に対する愛や自己犠牲と言った徳を散りばめた大作。楽しめます。

それにしても周瑜の言葉はダビデvsゴリアテを連想しますし、小喬の自己犠牲的行動はエステルを思い起こしますね。そもそも圧倒的戦力の差において勝利する孫権軍はギデオン軍を連想しますし。結果的には、曹操には大義はなく、天は孫権軍に味方したわけです。

諸葛孔明を演じる金城武の冷静さがイイ。中村獅童は前回と同様に論外。『三国志』においては1,000人以上の登場人物がいるが、私的には策士孔明が好きなのだ。決して自身は表には出ないが、自然の理を知り、人物を見抜き、先を読み、布石を打ち、ちゃくちゃくと自分の義を実現する。人の甘言に乗ることもない。身長が180㌢以上あったらしいが、自身は武力を持ってガチンコすることがない。一見相手に負けたかと思うや、実は相手が孔明の術中に落ちている。

この点、劉備はいわゆる孔子思想にはまり、その言動は時期を得たものではない。悪役曹操は女性に弱く、これが致命傷となる。いずれ孔明と戦うことになる周瑜はやや真っ直ぐに過ぎ、孔明に弱点を見抜かれており、戦わずして自滅することになる。

私は『忠臣蔵』もかなり好きで、大石内蔵助にはまっていることは前から何度も書いている。昼行灯と揶揄されつつも、部下たちの本性を見抜き、志の欠落した者たちはあえてさっさと去らせ、300名以上いた家臣も最後には46名。要するに戦いは数ではないのだ。それは質の問題。どれだけ自分を大義に捧げているか、どれだけ自己から離れているか。志のない有象無象で膨らんだ軍勢は、実はまったくの無能。この意味で『三国志』や『忠臣蔵』は下手なニッポンキリスト教の"伝道映画"などを観るよりも、はるかに学ぶべき点が多い。

それにしても人生の幸いとは、共有するものの多い、しかし数少ない心ある同士を持つことにあると、昨今ではしみじみと感じる次第。

Access: /Yesterday: /Today: