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Dr.Lukeの一言映画評

Sugar氏はすでに主にあって前進を再開しています。やや凹んでおりました私も通常モードに戻るべきと思います・・・。

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ファイル 821-1.jpgクリント・イーストウッドの実質的引退作『グラントリノ』。脚本・監督・主役をこなした彼の深い主張に満ちる作品。下手すると臭い駄作になるモチーフだが、イーストウッドの渋く枯れた、最後の気力を振り絞るような円熟さが深いコクを醸す。癒し難い良心の傷を抱え、不治の病に罹った彼は、どのように自らの人生に終止符を打つのか。極私的には、キリスト教の軽薄さを揶揄しながらも、キリストの贖いを意識していると感じた。彼のその時の"形"は明らかに十字架である。ラストシーンのイーストウッドの搾り出すような歌声に泣ける。

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イーストウッドは、懐かしの「ローレン、ローレン、ローレン」の『ローハーイド』の頃から『ダーティ・ハリー』を経て、この10年ほど監督としての名作もいくつも残している。初期は単なる軽薄な二枚目役だった彼も、最近は社会の病理を深くえぐるものや、深い人間的な傷や葛藤を描く作品が渋く光る。ファイル 821-4.jpg人間、こういった味を醸すことができるように年齢を重ねたいと思うが、この作品限りで実質的に俳優を引退宣言したのが残念だ。

しかし、個人的な感想だが、彼のポートレイトと英国のコリン・アーカートのそれは実によく似ていると感じるのだが・・・。なんとも言えない陰影に漂う渋さが、老いてなお白人ならではのカッコよさではある。

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