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松本清張『夜光の階段』

ファイル 861-2.jpgテレビ朝日のドラマ『夜光の階段』が面白い。美容界をめぐる男の野心と女のストーカー的独占支配欲でドロドロの人間関係模様。それぞれの思惑が散々に乱れる中で、あちこちに罠が仕掛けられ、虚々実々の駆け引きの緊迫感。愛されたい女は男に迫るも、男はその束縛を嫌う。が、女は男の弱みを握って、一生独占することを目論む。うーん、女は実にコワイぞ。特に年齢とか身体の衰えなどの引け目を感じつつも、それを直視したくないプライドの高い女は、男の愛情を繋ぎとめておくために何でもするのだ。

ファイル 861-1.jpgかくして松本清張はニンゲンを描くのが実に巧い。しかも男と女の性(さが)の本質的相違から、その転落と悲劇が生まれることを熟知している。その間には絶望的な深淵が横たわる。彼自身はその風貌から、現実において女性にもてたとは思えないのだが、それがかえって客観的な洞察力を生んだのだろう。彼の作品には挫折し屈折した正義感が抑圧されており、その抑えられた怒りが独特の陰影を生み出し、それが彼の魅力ある世界を彩っている。私的にはぜひニッポンキリスト教を描いてみて欲しかった。

まあ、男と女も、互いの相違や立場を熟知した上で、相手を思いやりつつ、水のようにさらさらと流れる関係が楽しいし、実りがあるし、リッチで芳醇な味わいがあるのだ。

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