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放射線について一言

紅葉がまだだが、森の中はすっかり秋模様だ・・・。

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さて、今週の『週刊新潮』によると、世田谷のラジウム騒動で、年間30mSv/hを浴びた老女はガンになったか、と指摘。なっていないではないか、だから放射能問題は社会的ヒステリーだと論を張っている。やれやれ、この記者こそがヒステリーだろうに。

放射線の生体影響としては、急性障害と晩発性障害があり、後者には確定的障害(多量に浴びた時に出る)と確率的障害がある。低線量被爆については諸説混在で、いわゆる「ホルミシス効果」があるとする説がある。つまり低線量では生体にとってかえってイイ影響を与えるとするもので、ラドン温泉やラジウム温泉の効能の根拠となる。京大の小出氏によると、今回の世田谷の件はどうもこの流れの中で起きているようだ。つまりこの種の放射能物質が販売され、かつ普通の民家に当たり前に保管されているわけ。

本件の老女については、当然のことながら、確率的影響の問題であり、すなわち統計学的に論じられるべきことなのだ。要するに、この老女がガンに成らなかったゆえに、年間30mSvは安全である、と結論することは で き な い の だ。愚かなものだ。マスコミは常に右左とどちらに振れるにせよ、この手の煽りで大衆を操作する。踊らされる大衆もア○なのだが・・・。

ちなみにこちらにチェルノブイリのデータがあるので、参照してほしい。どう読むかは、それこそご自分で判断して欲しいところだ。

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■出典:児玉龍彦、『チェルノブイリ原発事故から甲状腺癌の発症を学ぶ-エビデンス探索20年の歴史を辿る』、医学のあゆみ、Vol.231,No.4,pp306-310

■参考:低線量被ばくによるがんリスク:私たちが確かにわかっていることは何かを評価する

続き
追記:私がかなり深刻にとらえている理由は、チェルノブイリは一回の爆発で終わったのだが、Fukushimaはまだ収束していないこと。リチャード・コシミズ氏の言うように、実は陰謀があって、燃料はそもそも最初から充填されていなかったのであれば、話は異なるが、普通に考えると、300トン近い燃料がどうなっているかもわからない現状では、小出氏のような観測になるのが当然であろう。もう一点は内部被ばくを考慮した場合、外部被ばくよりはるかに重大な影響があること。再掲するが、関東圏の土壌汚染地図。チェルノブイリを物差しとして評価したもの。

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追記の追記:船橋で5.8μSV/h、足立区の小学校で3.99μSv/hが検出されたのニュースが流れた。それぞれ、年間で約50mSvと35mSvに相当する。ちなみに基準値を上げるとしている20mSv/hについては、次の報告がある。

ところで、今回の被ばく基準の上限である20ミリシーベルトという数値はどの程度の値なのか。

冷戦中に米国内で繰り返された核実験の長期的影響を研究し、「人間と放射線」の著書で知られるジョン・W・ゴフマン医師の試算によると、年間20ミリシーベルトの被ばくで1万人のうち80人ががんで死亡。ゼロ歳児は大人の4倍の感受性があり、1万人のうち320人が、やがて致死性のがんを発症するという


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