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「抗がん剤は効かない」のか

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ここでも紹介した、文藝春秋一月号の慶大近藤講師による「抗がん剤は効かない」が大きな反響を呼んでいるらしく、同誌二月号においては、がん患者代表として立花隆氏(膀胱癌)との対談記事がある。

「抗ガン剤は効かない」のか患者代表・立花隆、近藤誠に質す

抗がん剤はこれまで殺細胞薬、すなわち細胞自体を殺す薬が主流であった。これらの薬は基本的に猛毒のイペリットに由来するもので、ナースや薬剤師が調合する際には完全防毒の設備で行うのだ。患者の排泄物などにも毒性があるために、それらを処理する際には十分なる注意を要する。これだけでも抗がん剤治療を受けたくなくなると思うのだが・・・。

そして最近の分子標的薬により、より生物物理的な発ガン機構に基づいて、ガン細胞だけを殺す薬が台頭してきているが、何と、これがほとんど延命効果はないのだ!例えば昨年3月に認可された「ベクティビックス」。下のグラフは

審議結果報告書(医薬食品局管理課)pdf

から取ったものだ。

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Kaplan-Meier曲線は前に述べた生命表分析法の代表的なもので、ノンパラメトリックな手法により、生存率を計算するもの。BSCとは同薬を投与せずに、Best Suportive Careした患者のこと。PFS(Progression Free Survival)とは、患者のガンが憎悪しないで生きているかどうかを見る。こちらを見ると一見薬効があるように見える。が、これは統計データの取り方によりいくらでも曲線をいじることができるのだ。一方のOS(Orverall Survival)はいわゆる生存率であり、薬を飲んだ群と飲まない群の間で延命効果があるかどうかを見る。結果は、見て明らかでしょう。
続き
この抗がん剤の薬事審議会の議事録はこちらで閲覧できるが、各群のPFSに有意差は認められたが、OSに有意差は認められなかった」とあり、堀内龍也部長代理の委員が「高い有用性があるということでした。これは無憎悪生存期間(PFS)についてですよね。ですから、全体の生存期間は変わらないですよね。本来、抗がん剤というのは、生存期間がどのくらい延長するかを、主要評価項目にすべきでないかと思いますが」と批判的意見を述べている。が、意見交換が「禅問答のようですが、よろしいですか」とされて、最終的には認可されるのだ。この審議に関わる外部専門家は、腫瘍内科医(抗がん剤治療医)等、ガン新薬臨床試験の当事者たちが大半を占めている。そして彼らは製薬会社から膨大な・・・と言うわけだ。

さらに記事では芸能レポーターの梨元勝氏が肺がんと診断され、抗がん剤治療を受けてから2ヶ月で死亡した原因を抗がん剤の副作用としている。また物理学者の戸田洋二氏、ジャーナリストの筑紫哲也氏が、自分は抗がん剤の副作用で死ぬことになると言っていたとの例を挙げている。抗がん剤は、特に分子標的薬は消化器の粘膜を損傷するために、著しくQOLを低下させる。医師はその悲惨を実は知っているのだ。これはわが友人たちの証言でも明らか。自分は抗がん剤治療は受けないと言っている。

かくして製薬会社と癒着した医学界による臨床試験の現状の危機感と、抗がん剤、特に殺細胞薬の将来を憂い、ガン治療はキュア(治癒)ではなく、ケアに比重を置くべきことを指摘している。結論としては、やや記事自体が科学を離れて、禅問答的に終わる。立花氏いわく、「ガンの正体がよくわからないうちに、世界のがん患者の大半は一生を終えねばならないのです。・・・我々はそういう不条理なそ世界の中に生きているのだということをまずは理解しておかないといけないわけですね。人間の生のすべてが不条理と言えば不条理の中にあるのだから、それも仕方ないのかなと思いますがね」と。

(注)PFSについて質問をいただいた。単純な場合で考えてみよう。今患者が10人いたとする。全員が5年で死亡するとしよう。OSでは5年後に0となる。しかし患者の状態を観る時、全員が2年で悪化して5年で死亡する場合と4年で悪化して5年で死亡する場合では人生が異なるわけ。薬でトータルの余命は伸ばさないとしても、悪化するまでの期間を延ばせれば効果ありとするのがPFSだ。しかしPFSではどのようなステージの患者を集めるか、またどのような進行をする患者かなどによって曲線はいくらでも動くわけ。さらにどの時期で進行状態を判定するか、どのような基準で判定するかによっても結果が変わる。要するにかなり恣意的なのだ。

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参考:「巨大製薬会社の誕生」:これが"人類"(ゴイム)の未来らしいゾ!

井口氏の記事にもあるが、ヨーロッパでは何とハーブ系薬品が販売禁止となる。要するに漢方はアウトだ。いわゆるオルターナティブ・メディスン(代替医学)が排除される方向。

Europe to ban hundreds of herbal remedies

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平田陽三 平田病院

最近になって日本の癌学界でも癌組織体の根源細胞である癌の幹細胞の存在が注目され始めました、癌の根源細胞に関する研究が進展すれば、将来の癌研究や癌治療に重大な転機を齎すものと期待されます。小生は1992年以来、癌の幹細胞に対処する治療概念、すなわち、今までにない全く新しい治療概念を記載した論文17篇を国際的な医学雑誌に発表しています、それらの論文資料にご関心のある方には、個人的に無料で郵送致しますので郵送できる宛先をお知らせ下さい。
 猶、”がん幹細胞”の項目でGoogle剣先してみて下さい、誤った理論もありますが参考になると思います。
 780-0870 高知市 本町 5-4-23 平田病院 平田陽三

Luke

興味深い情報を感謝致します。新しいガンへのアプローチを期待しつつ、臨床の現場でのご活躍をお祈りいたします。

  • 2012/04/24 17:54
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