インフルエンザ新薬「ゾフルーザ」に期待
かつて一世を風靡したタミフル、いろいろ副作用もあるとか話題になった。今回、塩野義製薬からゾフルーザ(Baloxavir Marboxil:バロキサビル・マルボキシル)なる新薬が出た模様。構造は次のとおり:
インフルエンザ・ウイルスは図のようにタンパク質でできた表面にヘマグルチニン(HA)とノイラミダーゼ(NA)という棘を持っています。HAは15種類、NAは9種類あり、今回のウイルスはHAの1タイプと、NAの1タイプを有するのでH1N1と呼ばれます。つまり理論的にはH1N1からH15N9まで、15×9のタイプが生じ得るわけです。
HAは粒子を接着させる機能があり、ウイルスはこれで細胞に吸着し侵入します。NAは逆に細胞から飛び出すときに働きます。タミフルやリレンザはNAの働きを阻害する作用を持ちますが、ウイルスそのものを殺すことはできません。増殖を抑えるだけです。
しかしやっかいなことは、HAもNAも微妙に構造を変えていくわけです。このためタミフルを鍵とすると、NAの鍵穴に相当する部位の構造が変わりますと、タミフルはハマルことができません。かくしていわゆるタミフル耐性ウイルスができるわけです。
そこで理研ではNAの構造をコンピューターでシミュレーションして、出現し得るNAの構造のリストを作っています。これを参考にしてドラッグをデザインするわけです(in silico)。
また最近、NAを阻害するだけではなく、HAも阻害する物質も追及されています。試験管内(in vitro)では成功しているようですが、臨床応用段階(in vivo)に至るにはまだ時間がかかるでしょう。先の筑波大と横浜市大のRNAポリメラーゼ阻害と合わせて将来に期待がかかります。
ところが今回のゾフルーザはウイルスが増殖するためのmRNAを阻害する作用機序とのことで、ウイルスが劇的に減少すると報告されているようです。カプラン・マイヤー曲線は上のように、「成人の国際共同第III相試験の罹病期間は、プラセボ群の80.2時間からBaloxavir群では53.7時間と有意に短縮した(26.5時間の短縮)」とのころです。
さて、今年の冬はインフルエンザ・フリーで過ごせますでしょうか?
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