Dr.Lukeの一言映画評
- 2010/07/10 18:20
- Category: 映画
あの昭和の大事件三億円事件をモチーフにした『ロストクライム-閃光』。あまりにも見事に行われた犯行。死傷者もなく、三億円も保険でカバーされたクリーンな事件。当時、犯人としてもっとも有力だった警察官を父に持つ19歳のSが青酸カリで自殺し、事件は迷宮入りした。と、言われていたが、この映画ではさらに裏があった。迷宮入りではなく、意図的に隠蔽されたのだ。理由は?・・・ネタバレになるのでご自分でどうぞ。
まあ、この原作者の推理を小説としたものだが、けっこうあり得そうな面白い推理ではある。前に読んだ一橋文哉の『三億円事件』は、一枚の焼け焦げた500円札から始まるが、タケシが主犯「先生」を演じてドラマ化された。これは不良グループによる巧妙な犯罪との設定だった。
対して今回の推理は、警察と言う、もっとも体面を重んじる組織と真実に迫る執念の刑事との葛藤を巡るモチーフとなっており、あの『金曜日の妻たちへⅢ』で、ややにやけたフジモリ君を演じた奥田瑛二が60歳となり、見事に人生に疲れた老刑事になり切っていた。完全なノーメイクで演じたらしい。対して渡辺謙の息子渡辺大が組織の怖さを徐々に知る新米刑事を好演していた。
それにしても60年代から70年代にかけて、安保闘争、学生運動などを経た激動のニッポンは生きていた。エネルギーが有り余っていた。今はどうか。そう、分裂病の陰性症状、無気力、無感動、感情の平板化、自閉・・・。政治経済ばかりでなく、人間自体が末期状態を迎えつつあるような・・・以下略。