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Dr.Lukeの本日の一冊

定説、そは誰により、何ゆえに確立せられしか・・・。

私たちは文科省の検定済教科書で学ぶところの知識を、これまで疑問を呈することもなく、信じ、覚え、答案に記述してきた。例えば、『魏志倭人伝』に言う、卑弥呼と邪馬台国。江戸時代の国学者より、邪馬台国の位置論争が継続され、京大系では畿内説、最近では纒向遺跡がその卑弥呼の墓として有力視されている。東大系では九州説。大和朝廷は神武東征により成立したと言われる。元々この論争は『魏志倭人伝』の記載に従うと倭の国は九州をはるかに超えた海中になってしまうためで、その解釈を巡っていろいろな説が生まれた。方角の記載が違ったとか、昔の地図は方角が今とは違うとか・・・。

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ところが、本書『卑弥呼の正体-虚構の楼閣に立つ「邪馬台」国』は久々にワクワクするオドロキと、「えーっ」と叫びたくなる感動を与えてくれた。定説が崩壊する時、私は実に快感を覚えるのだ。著者は在野の歴史家。中国の古典289冊3668巻とその注釈・解釈本を渉猟し、古代の地理的記述に基づいて出した結論が、実に驚き!ここでネタバレすると続く読者の喜びを奪うことになるので、ポイントだけ言おう。

すなわち私たちが習った朝鮮半島にあるべき、百済・新羅・高句麗などは、そこにはなかったのだ!では何処に?ハイ、ご自分でお読みください。したがって、『魏志倭人伝』の記載するルートを辿ると、倭の国はどこにあるのか。ハイ、矛盾なく、今の日本列島ではありません!では何処に?ハイ、ご自分でお読みください。要するに倭国は日本列島にはなく、したがって卑弥呼は古代日本のシャーマンではないのです!

ひとつ証拠を挙げますと、「卑弥呼」を私たち日本人は「ヒミコ」と発音し、なるほど古代の日本的女性名と思っています。が、これを中国人が発音すると、実は私が教えている中国の留学生にも確認したのですが、「ピミフ」あるいは「ビニフ」なのだ!どう聞いても、日本の名前ではありませんね。これは実は漢字を使う日本人が中国人の名前を理解する時、あるいはその逆の場合、罠になるのです。つまり卑弥呼を漢字の意味で捉えることは大きな誤りに落ちるのです。中国人は音に同じ音の漢字を当てはめるだけで、意味の考慮はありません。つまり「ピミフ」あるいは「ビニフ」と聴こえたので、「卑弥呼」なる漢字を当てたに過ぎないわけ。

卑弥呼がアマテラスだとか、最近いろいろな説が出ておりますが、本書によるとそれらはすべて崩壊します。文科省、否、巷のあらゆる邪馬台国論争を巡る説がほとんど音もなく崩れ去るのです!とすると、当時の日本列島は如何?本書はこれについては答えておりません。

皆さん、私はこれまで「911事件」なども含めて、現代は巨大なフェイク(虚構)を見せられていると言ってきましたが、どうも歴史学のいわゆる定説においても、おおいなるフェイクが、誰かによって、何かの目的のために構築されていたのかも知れません。歴史学はしばしば時の政治的権力と密接に関係しつつ、ある種の人間関係の力学の中で、定説なるものが作られるのです。前に佐藤優氏が、「神学は声の大きな者とより論理性のないものが生き残る」と言っているのを紹介しましたが、大体において文系学問はその傾向が強いと、理系の私などは、ややひがみ根性を覚えつつ、感じている次第。

嗚呼、わが日本とは、いったい何なのだ!?ますます分からなくなりましたが、ますます好奇心が沸いてきた次第。本書は強くお薦めいたします。

Comment

エシュコル

そうなると、キリストが青森に来て死んだ、と云うのは難癖ですかね。しかし興味深いものがありますね。

  • 2010/07/05 00:33
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