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本日の一冊

ファイル 856-1.jpg罪と罰の精神鑑定-「心の闇」をどう裁くか』。著者は東工大教授景山任佐氏。これまで800件の精神鑑定を行うエキスパート。

冒頭にドストエフスキーの『罪と罰』のラスコーリニコフの例を挙げて、ドストエフスキーの先見的問題提起が、裁判員制度が始まる現代のわれわれが直面するであろう問題が同一のものであると指摘。果たして裁判員制度において心の病をもった人による犯罪をいかに評価し、いかに裁くのか。

例えば宮崎勉のケースでも鑑定結果は三つに分かれた。大まかに言って、「分裂病」、「多重人格」、そして「精神病質」である。今の診断名によれば、「統合失調症」、「解離性自己同一性障害」、そして「人格障害」となる。これは今もなお学会の中でその学閥の絡みから微妙な遺恨を残しているほどだ。これほどに専門家の間でも見解が分かれるのが精神医学の特徴。またミュンヒハウゼン症候群などの詐病もあるが、それを見抜くのは難しい。ニッポンキリスト教にもこのような被害者を装う者はかなり多い。彼は実に狡猾にして巧みに人々の同情を誘う。被害妄想を持つ者も多い。それを専門知識もない裁判員が見抜くことができるのか。

例えば癌などならば、そのCT像、PET像、MRI像などを診れば、専門医の間で見解が分かれることはないだろう。癌のステージの評価などには差が出るだろうが、癌を結核としたらそれは誤診となる。かくしてお寒い精神鑑定の現状のまま裁判員制度が始るわけだが、これは相当の問題をはらむことは素人でも分かるだろう。最近の例としては、「セレブ妻夫バラバラ殺人事件」、「秋田幼児連続殺人事件」、「歯科医家庭での妹バラバラ殺人事件」、「派遣社員によるOLバラバラ殺人事件」を上げている。果たして彼らをどう評価し、どう裁くのか。それぞれが裁判員になった場面を想定して、ぜひご自分で考えてみて欲しい。

ニンゲン、げに恐ろしき、不気味な存在。しかるに神は何故に・・・。

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