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Dr.Lukeの未読の一冊

ファイル 947-1.jpg村上春樹氏の『1Q84』が200万部だとか。おどろき。彼のイスラエルでの壁と卵のメッセージは実にカッコよかった。ニッポンキリスト教の思考停止したイスラエルフリークに聞かせたいものだ。で、本作は青豆と天吾なるふたりの物語を行き来するらしい。そしてその物語sがオウム真理教がモデルのあるカルト教団と結びつくのだとか。善があるときには悪にひっくり返る病理現象を描いているらしい。ドストエフスキーの追及したテーマとも共通するようだ。ヴィオロンさんもずっと書かれていた。

彼はこれまで社会との関わりを嫌う、存在感が希薄な、やや人格障害系の登場人物たちの絡みを描いていたと勝手に思っているのだが、オウム事件以降、個人と社会の関わりが彼のテーマになっているとのこと。『1Q84』では個人が思考停止し、"何か"に自分を委ねてしまう有様に対してアンチテーゼを提出しているらしい。この"何か"をシステムとし、システムに安易に身を委ねる人々が多いことを指摘している。善と悪の判断も他人任せ、しかもその善と悪も、時に逆転現象が起きるのだ。つまりどちらも同じ"何か"の裏表であるとして、自ら主体的に考え、かつ関わることを提案しているのだそうだ。以上、NHKの『クローズアップ現代』より。

なんだ、これは人々の思考停止を招き、身を委ねさせるところの"システム"を"ニッポンキリスト教"に置き換えれば、すでに現実に起きている事象ではないか。このギョウカイでは善と悪も時にひっくり返るし、それは実は同じもの。何が真理で何が偽りかもすでに分けワカメのニッポンキリスト教。案外、青豆と天吾の物語は身近にあるのかも知れませんよ。

本書は明らかにジョージ・オーウェルの『1984』を意識しているが、オーウェルは"ビッグ・ブラザー"を登場させたが、村上氏は"リトル・ピープル"だ。果たしてこの正体は?村上氏の作品はその曖昧性によって、読者がそれぞれの内的世界観や願望を投影し易いわけで、これがどうも人気の原動力のようだ、と私は勝手に推測している。かくして"リトル・ピープル"も読者がそれぞれに"何か"を投影するのだろう。

うーん、Dr.Lukeは小説はどうも苦手なのだが(特に人々が飛びつくものとは意識的に距離を取っている)、ちょっと食指が動いたかもしれない。が、Dr.Luke的に言えば、こういった作品が200万部も売れてしまうこと自体が、すでに村上氏の問題意識の証明となっているのだ。既読モードにシフトしたら再度書いてみよう。

Comment

DJ Jerry

村上春樹フリークの僕ですが、あえて1Q84はおあずけにしておきます。文庫化されてからゆっくり読もうかと。理由は2つ。流行に乗りたくない(僕はいつでも正規分布の一番右端にいたい)、ジョージ・オーウェルの1984を先に読みたい。巷では早くも1Q84の解説本が出回っていますが、そんなものには目もくれず、僕は今、江藤淳の「決定版 夏目漱石」と聖書に夢中です。

  • 2009/07/14 21:25
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Luke

なるほど、DJ Jerryらしい^^

  • 2009/07/14 22:12
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