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本日の一冊

ファイル 681-1.jpgチェ・ゲバラ-革命を生きる』(創元社)。写真が実に豊富。チェ自身のカメラの腕もかなりものだったようで、しかも記録魔。ありとあらゆる事柄を文字と映像で記録していた。アメリカ帝国主義の欺瞞と戦いつつ、あくまでも民族の自立を目指した彼の精神と活動の歩みがコンパクトにまとめられている。

運命の出会いをしたカストロがやや狂信者のようなオーラを醸しているのに対して、チェはかなりの知性派であり、医師でもあり、サイエンティストとしての姿勢に私的にはかなり共感できる。ファイル 681-2.jpgしかもカッコイイ。彼自身が映画俳優のように渋い。歩き方などもかなり意識していたようであるし、また国連での演説でもオリーブ色のゲリラ戦闘服だったが、これはかなり計算がある。

つまりはエルネスト・ゲバラ・エ・ラ・セルナは、英雄的革命家「チェ・ゲバラ」を演じたのだ。先のヴァン・ダムが「ヴァン・ダム」を演じたように。地位と権力を得ながらも、カストロに別れを告げ、あえて戦場に向かって処刑された彼の生と死は、確かに祖国に捧げられたのであるが、実はこの演じられた「チェ・ゲバラ」に捧げられていた。しばしば英雄は自己愛性および演技性人格性向を有するものなのだ。彼はその英雄的な死をもって、自ら書いた「チェ・ゲバラ」のシナリオを閉じたのだ。かくしてジョン・レノンをして、「20世紀でもっともカッコイイ男」と言わしめた。

彼の人生にはカストロとの出会いが決定的な影響を与えているわけで、こういったある時代にあって、正反対の、しかし目的を同じくするパーソナリティが出会うと言う事件が世界を変えるわけで、私的には絶妙に働く神の摂理を覚えるのだが・・・。ユング的にはシンクロニシティか・・・。対してここでも少し触れたが(→三島とマルロー)、同時期の日本、「盾の会」のメンバーと共に腹を切った平岡公威は残念ながら「三島由紀夫」を演じ切れなかった。それは何とも意味づけの困難な中途半端な死だった。共に武士たらんとしたが、時代と社会はチェをして武士を全うさせたようだ。いずれにしろ男の価値はその死様にあるようだ。綺麗な死に向かった生を歩みたい。

で、今、カストロ死亡説が流れているとRSSに入ってきました(→記事)。時代が大きく変わりつつあることを感じる。

追記:Salt氏がコメントされていました:

2000年前の十字架が、私の最期であり、始まりでもある。実は本当のカッコよさはそこにしかなく、すべての憧れは十字架の影なのだと思う。

そうですね、私が大石内蔵助や三島由紀夫、そしてゲバラに惹かれるのも、実は十字架の影を見るからでしょう。もっとも惨めで格好の悪い死を主イエスは経られたのであり、実はそれが最高にカッコイイ。よって彼こそは実は真の大石であり、三島であり、ゲバラなのだ。

主の慈しみに生きる人の死は主の目に価高い。

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