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愚かさに殉じること

三島の命日が近いこともあり、このところ続いているが、Salt氏も三島に惹かれた者として「三島由紀夫を殺した平岡公威」としてその見解を披露している。いわく

「ことば」が肥大した虚弱児であった三島は、その青年期のコンプレックスを跳ね返すため、精神よりも筋肉のリアリティーを信じ愛した。そして、自分の美意識の中にいのちを封印した。的外れの栄光よりも理性による嘲笑を欲し、怠惰よりも苦痛を、そして、退屈よりも死を選んだのである。

三島文学という嘘に騙されるほど平岡公威(三島の本名)は馬鹿ではなかったということ。

ファイル 3977-1.jpg

三島はすべて知っていた。この世も天皇もみな虚構であると。では、リアリティとは何か。彼にとっては肉体だった。筋肉の動きと筋肉の痛み。その肥大化とフォルムの形成。そこに彼は自分のアイデンティティの根拠の確かな手応えを覚えた。そしてその究極があの痛みと苦痛だったのだ。もちろんナルシシズムもあろう。しかし確かに言えることは、彼は自分の腹に5cmも短刀を突き立てたのだ。そして引き回し、最後に上に向けて切り裂いた。これは誰も否定しようもない厳然たる事実だった。解剖所見からの次のような推測が可能である
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Comment

shige

虚構と欺瞞の世の究極の縮図であるキリスト教は、まさに罪の本質を顕わしてますね。
でも三島は自分の内面の罪をどのように理解し、処理してたのでしょうか?
同じ問題を道元や老子にも聞いてみたいです。

  • 2013/11/14 05:00
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Luke

罪の問題は少なくとも三島においては抑圧されたか、あるいは最後の腹切りによって帳消しを目論んだかではないかと思います。
老子や道元においてはどうでしょう、罪の致命性を知りつつもなす術がなかったわけですから、内的葛藤からは解かれたとしても、神の前では残されていたと思います。
では、彼らの永遠はどうなるか?われわれには不可知の領域でしょうか。

  • 2013/11/14 07:33
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zion

維新から明治にかけ多くの天才的思想家、政治家など大器が現れこの国を動かしてきた。あの動乱期に神が特に用意された配剤。あの時代は神の御手を感じさせる。しかし戦後、平成の御代と、どこを見渡しても器と言える人物がいない。戦後のどの総理も文化人もお札にならない。強いて言えば長嶋やイチローはお札になるかも。。。

  • 2013/11/14 23:01
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shige

道元や老子に開かれた世界は善悪の木由来とは思えないのですが、命の木でないとなると「あいつ」?

私にとって、このブログのキリスト教界に対する警告はまさに「荒野の声」でしたが、それを「荒野の叫び」にしても、すでに死んでるルークさんに介錯は要りませんね。

ちなみにダラスファーストバプテストのロバート ジェフレス師は聖書的に明確に真理を語られるので何度か狙われて、今では護衛付です。

  • 2013/11/15 02:38
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Luke

禅の言葉に「父母未生以前本来面目」と言うのがあります。聖書的には「善悪の木の実もいのちの木の実も食べる前の有様」と言うべきか。老子も禅も善悪を超える生き方を志向しますが、それはいわゆる西洋哲学の弁証法的実存とかではなく、単純にエデンの園で何気に生きていた有様なんだと思います。人間にはその時代への憧憬と記憶があるのでしょう。よく精神分析では「子宮復帰願望」と言っていますが。それは罪に汚される前の無造作にして作為のない無為の世界。もちろんキリストの復活のいのちの領域ではあり得ませんが。しかし、その世界に生きるべきエクレシアが人間の作為漬けのキリスト教に閉じ込められているわけです。

  • 2013/11/15 07:51
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shige

なるほど。神のかたちに似せて創られた人の無垢な良心のなせる業ですか。凡人にとって何らかの事情で魂の未発達を余儀なくされた人は幸いかもと思うことがあります。人の作為の入り込む余地のない人生。

しかしまた、神はむしろアダムが善悪の木の実を食べて、一旦善悪を知った後、自由意志で神に立ち返ることを選ぶことを第一に望んでおられたのではと思うことも。ローマ11章32節にあるように。

まさにこれに続くローマ11:33~36ですね。

  • 2013/11/15 10:37
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Luke

おっしゃるとおりですね。一度堕落があり、贖いと私たちの自由意志により神に帰る、この一見無駄に見える、あるいは人によっては神の悪戯にさえ見える過程があって、私たちは神を知り、その関係を深めることができるわけです。

ああ、神の想いの深さは何というべきか・・・・。

  • 2013/11/15 12:27
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