Entry

トップ > 漢詩 > 酒の詩-王維の場合-

酒の詩-王維の場合-

最近、実に酒が美味い。ビールは腹が膨れるのであまり好まないが、冷酒とワインにはけっこうハマっている。六本木で飲む鳳凰美田を初め、日本の銘酒をひとわたり味わってみたい。ワインは薀蓄が難しいので、適当な選択だが、当たった時は感激だ。今夜もVOLKSのステーキと赤ワインを楽しんできた。漢詩でも酒は大きなテーマとなる。あの曹操の『對酒』をはじめ、壮大なスケールというか、世界観が広がるものが多い。

そこで今回は王維。十代の頃から、詩と絵と琵琶に長けていたイケメンの王維。719年、21歳で進士に及第するも翌年に左遷。その頃出会った身分の低い女と恋に落ちる。人目を忍んだ逢瀬を経て、31歳で士身分を捨てて彼女と結婚。「文陽の人」と呼ばれるが詳細は不明。33歳で彼女は逝去し、その後は独り身を貫く・・・。というロマンチストの王維。その詩も「視覚の美、仏教徒としての静寂な思想と恬淡で清新優美な芸術的風格の詩。言葉で語りつくせない余韻を残す詩。静寂な詩の世界に誘われ、読む人の心を豊かにする」と賞される。

次の詩は出世を焦る友人を諭したもの。焦りと不安とイラ立ちに苛まれ、自分が何を求めているかも分からないままに、闇雲にもがいているクルシチャンにもフィットするだろう。

ファイル 3662-1.jpg

酒を酌んで裴迪(はいてき)に与う
酒を酌んで君に与う 君自ら寛(ゆる)うせよ
人情の翻覆(はんぷく)は波瀾に似たり
白首の相知(そうち)も猶を剣を按(あん)じ
朱門の先達は弾冠(だんかん)を笑う
草色全く細雨を経て湿(うるお)い 
花枝動かんと欲して春風寒し
世事(せじ)浮雲 何ぞ問うに足らん
如(し)かず 高臥して且つ餐(さん)を加えんには

おい、君よ、酒でも飲んで、ゆったりとしたらどうだい。人情の揺れなどは波のようなものだからさ。白髪になっても剣を取り合うこともあるし、先に偉くなった連中はあざ笑うけどな。草は雨で生き生きしているが、枝の花は動こうとしてもできないで、寒さでぶるぶるしてる。世の中のことは、浮雲みたいなもので、あえてガチになるほどでもないから。ゆったりと寝転がって美味い物を食うことに比べればさ。

これって、やっぱり、怠惰をこよなく愛する小市民Dr.Lukeとしてはマルコ四章(Mark 4:26-28)を連想するのだが・・・。

「あなたがたは思い煩ったからとて、髪の毛の一本も黒くも白くもできない」-Jesus

Trackback URL

https://www.dr-luke.com/diarypro/diary-tb.cgi/3662

Trackback

Access: /Yesterday: /Today: