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本日の一冊-五木寛之『レッスン』+『色彩を持たない・・・』

若い頃、そう20台の頃は年上の女性に憧れをいだいていた。自分が何者かも、これからどうなるかも分からない不安な時代に、自立して仕事もさっそうとし、何かいろいろなことを知っていそうな感じと、どこか神秘的な感覚を覚えたものだ。かつてのカノジョも、したがって、年上だったのだ*1

私が五木寛之のファンであることはすでに何度も書いているが、最近、改めて彼の作品を読み直している*2。で、『レッスン』。26歳の青年がふと出会った42歳の女性からいろいろなレッスンを受ける・・・。

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五月になるとぼくは、ひとりでフィレンツェにやってくる。あのひととのレッスンの日々を、確かめるために。クルマ、ゴルフ、ファッション、レストラン、セックス、マナー…。そして人生と、死について。そう、あのひとは僕の最高の教師だった・・・。

前にも書いたが、五木の描く女性は自立し、硬質で、知的で、表向きは理性で武装しているが、内面には女の情念を持て余している。これは五木の理想的女性像だろう。これがけっこう私と共通している。五木はその思想を登場人物に仮託して語らせる。人間の成長とは何か。人と人が関わるとはどういうことか。人は人の間で人になれる、とは金八先生みたいだが、事実だ。その相手といかなる時間と空間、そして体験をどれだけ深く共有し得るか、これは人生の、また自分の人格形成の宝となる。相手の人格の中にどれだけ自分が入り込み、また相手にもどれだけ深く入り込ませるか。ここに人間関係の豊かさが決まる。主人公の名は「伽耶」。昔のカノジョの名ととてもよく似ている響きなのだ・・・。

追記:つい仕事の合間に村上春樹の『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』を買って読み出してしまった。

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うーん、これが『ノルウェーの森』をやさしく言い換えたような作品で、あっと言う間に半分を読了。けっこう面白い。それほど深いものではないが、アカ、アオ、シロ、クロの仲間からなぜか絶縁され、自殺を考えるほどに追い詰められた、色彩を持たないつくるが、年上の女性沙羅との関係を通して自分を取り戻し(あれ、何か、私と似ているかも・・・)、ある面色づけられつつ、事の真実を知る物語といったところ。ネタばれはまだこれから。ある種の自分探しの旅にミステリーが絡んでいる形か。今晩中に最後まで行く予定。

*1:最近の若い子はタメの男子にあまり魅力を覚えないようだ。「おこちゃま」に見えるらしい。彼女たちのターゲットは、人生の酸いも甘いも噛み分けた完成された大人の男にあるらしい。だから、共に成長することができなくて、おこちゃまがオトコになれないのだ。
*2:別に村上春樹の『視覚障害色彩をもたない・・・』に対抗しているわけではないのだが・・・

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