ヒューマンファクターの脆弱性-言語論&認知論の視点から(追記あり)

FBで面白いトピが流れて来た。

お分かりだろうか? WO7とも言いますからね。

航空機管制とはいかなる仕事であるか、このビデオ見てください。

そしてすでに事故には至らずともこのようなヒヤリハット事象が生じているのだ。

今回の場合、これまでの報道で見る限り、論点は-

  1. 海保機長の管制からの指示に対する認識が誤認か否か
  2. JAL機が海保機を視認し得たか、得たとすればゴーアラウンドの可能性は
  3. 管制が滑走路問題なしとJAL機に指示してるが、管制は海保機が滑走路にいることを確認できなかったのか
  4. そもそも羽田管制と海保の離着陸プロトコルの祖語の有無は

といったところでしょうか。

いずれにしろ原因は元JAL機長が指摘する通り複数であり、管制、JAL機、海保機の当事者の世界線のもつれ方の不具合が生み出した事態だ。極私的にはAI化が必要となると思う。というか、それが最も適切かつ可能な領域であろう。

海保機が管制の言葉の意味するところを取り違えていたとすれば、次のような問題が根底に存在することになる。すなわち言語マトリックスによるヒューマンファクターの脆弱性である。

言語は(単純化して言えば)シンタックスとセマンティクス、そして発音があるわけだが、シンタックスと発音が同じでもセマンティクスが異なることがよくあるわけ。シニフェとシニフィアンの関係だ。前にも紹介したこれなど。

  • J国人は人の嫌がることを率先してする
  • K国人は人の嫌がることを率先してする

この意味の取り方はその人のJ国とK国に対する先入観(好き嫌いの感情)で決まる。人はリアリティー(外界)をあるがままには観ていない。一度物理的サブスタンス(光や音など)を電気信号化して神経伝達し、大脳の各感覚野で再構成を行い、さらに概念化してリアリティーの内的描像を構成する(ヴィドゲンシュタインの「言語は世界の映像」論)。最後にソレをリアリティーと思って評価・判断して行動に移す。ここに各人の個性や感情によるノイズが乗るのだからややこしいわけ。

この点、AIは時空間の諸事象をデジタルコード化し、それを操作することで、単純に学習で得たアルゴリズムだけで判断することができる(つまりノイズがない)。しかもディープラーニングは原理的にはいくらでも学習することが可能である。すでに車では可能となっているが(精度は問題ありとしても)、原理的にはコンピューターの性能が上がればいくらでも精度は上がる。というか、大脳のニューロン回路をシリコン版で再現できるのだ。

したがって感情とかノイズを絶対に回避すべき航空機の管制コントロールには一番適する技術である。今回の場合は、「同一時点で同一の滑走路に存在し得る航空機はただ一機である」とするルールを組み込んでAIに状況判断させればよいだけだ。すでにそのような研究はなされているとは思うが、今回の事態は言語マトリックスに縛られている人間の本質的脆弱性が惹起した事故であると考える。

追記:この図を見ると、”holding point C5″を「C5上の滑走路待地点」と訳している。この訳も「C5の待機路地点」とする向きもあるが、前者では滑走路の地点と読めてしまう。これが言語マトリックスの罠であり、英語そのものと実際の地点を紐づけるべきなのだが、海保機長は一度日本語に翻訳して「滑走路の地点」と理解したのであろう。

要するに”holding point C5”の物理的位置が管制と海保の脳内でスレチだったわけ。加えて「海保機がno.1である」との後押しがあったから、最優先で飛べると理解したのであろう。霊と心の区別もできない邦誤訳と同じレベルのミスだ。前者は生命が掛かってるが。

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